2006/11/15

確信犯的釣り師

伊吹文部科学相宛の自殺告知手紙について

 1通目の自殺告知の封書は、衝撃的であり、タイミング的にも、内容的にも、カツがれるには十分過ぎる内容だった。穿った見方をする評論家たちもいたが、政府や関係者や世論を啓発するための最高の一擲だ。
 人生を斜めからしか見たことのない僕が思うに、あの1発目は、絶対に「釣り」だ。もしあれが、政府ないし関係者が「ヤラセ」だったら、称賛に値するヤラセだ。

というのも・・・

 まずニュースやワイドショーでいじめ自殺問題が、最大の話題となっているこのタイミングで、文部科学相宛に、差出人不明の手紙が届く。自殺を予告する内容だ。そりゃもう国をあげて防止にとりかかるわけだ。半分消えかかった消印の「豊」だけを頼りに。
 さて、マスコミは大々的に取り上げて、「豊」のつく消印の手紙を書いたやつに、電波の力を使って、こうやって説き伏せる。

「思い留まるんだ。でも、差出人をちゃんと書いとけよ」

そういう政府やマスコミの動きを見て、世のいじめられっこたちは、どう思うだろう?
「とりあえず、死ぬにしても、手紙出してからでもいいかな」
「豊の消印の人の思ってることわかる。実は、わたしも・・・」

 そして、自殺予告手紙は、ちゃんと差出人の名前が書かれた状態で、続々と届くことになる。
手紙だけではなく、テレフォン相談窓口なんかにもガンガンかかってくる。一連の事件をきっかけに、相談窓口のPRも増えたことだし。自殺予告に留まらず、いじめられている実態をつづって助けを求める手紙まで届くことだろう。
 というわけで、あの「豊の消印の人」のおかげで、相談窓口はパンク状態、自殺予告や助けて手紙も山のように届くようになったわけだ。

 もはや、あの「豊の消印の人」が、釣りであろうが、やらせであろうが、捏造であろうが、愉快犯であろうが、そんなことは、もはや関係ない。あの手紙によって、世のいじめられっこの救済窓口の門戸が開いたのだから、効果は絶大であったと、称賛する以外ないだろう。

 プロジェクト名をつけるのであれば、「鮎の友釣作戦」とでも言おうか。

「豊の消印の人」、GJ!

2006/11/10

Shall we Dance?

 デアゴスティーニという出版社は、とても人間の心のすき間を突くのが上手い会社だ。

思わず第1巻を買ってしまったために、クラシック・コレクションを全巻揃えてしまった。隔週で2000円弱という金額も無理がないあたりが、絶妙すぎる。
その半分眠りかけていたクラシック・コレクションが陽の目を見るときがやってきた。娘の情操教育にばっちりではないか。とくに寝つけの悪い娘には調度いいだろう。

「娘を眠らせるには、小夜曲がいいに違いない」と思い、モーツァルトをかけてみたりもしたが、効果はまったくなかった。ナハトムジークは、全然夜に似合わない。

とりあえず、片っ端からクラシックコレクションをかけてみる。まずは、キャッチーでなくてはいけない。娘が注意して聴いてるっぽいやつを厳選した結果、ヨハン・シュトラウス2世がいいらしい。親父の方の1世ではダメらしい。しかも、穏やかな曲なんかではなく、思いっきりワルツってるやつが特にお気に入りだ。
 
 娘を抱きかかえながら、「春の声」と「皇帝円舞曲」をかける。娘を抱えている腕が、小さくワルツを刻んでしまうのだが、その動きが彼女の眠りを誘うらしい。「美しく青きドナウ」のあたりで、眠りに落ちてしまう。それまで、僕は彼女とワルツを踊らなくてはいけない。

 たぶん明日も、時計の針が夜の10時を回るころ、彼女とワルツを踊るのさ。彼女が眠りにつくまで。