2006/10/07

I'm in the minority - Rush(1)

普通に楽曲のレビューしてもいいんだけど、そんなレビューはくさるほどあるだろうから、そっちにまかせるとして、「このCDで僕はこう変化した」的な話だと、ちょっと楽しめるかなとか思います。


ーーー エキセントリック、マイノリティと言われること、別に嫌いじゃないですよ。


Rushとの出会い。

 僕は、貧乏だった。どれくらい貧乏かというと、2ヶ月のお小遣いを集めて、CD1枚買うのがやっと、という高校生活を送っていた。だから、購入するCDを選ぶ時には、それはもう必死だった。
 当時は、MTV、ベストヒットUSA、FMステーションからの情報しかなく(あ、ピーター・バラカンのスーパーポップTVなんて渋い選曲していた番組もあったなあ)、学校の友達との会話では、ビルボードのランキングだとか、DURAN DURANだとか、Wham!だとか、とにかく、ヒットチャートの話題で溢れていた。というか、それしかなかった。
 やはり、クラスの友人と話を合わせるべく、というか、選択肢がそれしかないのだから、僕もヒットチャートをよく聞くミーハーな好みだった。(今となっては、時々KajaGooGooを聞いたりもするのだが、なかなかいい曲だねぇ、TooShyは)
Till Tuesdayを知っているだろうか?女性ボーカルのエイミー・マン率いるバンドだが、このアーティストのデビュー曲「Voices Carry」にやられてしまった。彼女の声に惚れてしまった。そもそも女性ボーカルっちゅうのは、もっと幼いころに、兄の影響で、BlondieやKim CarnsやFleetwood Macなんかを聞いていて、ちょっとハスキー系なのが好みだったのだが、彼女の澄んだ声にやられてしまった。
 しかし、いかんせん僕は貧乏だった。だから、Til Tuesdayのアルバムは買えなかった。しかも、この曲は売れ線ではなかった。この頃の女性ボーカルの決定版は「Bungles」しかありえなかったのだ。だから、Til Tuesdayは、スルーした。
 法律的にやばい話になるが、当時は、クラスメートで購入したCDをみんなでダビングして楽しんでいた。僕個人の判断基準というよりは、クラスメートの動向も視野に入れた上での選択となるのだ。BunglesはOKだが、Til Tuesdayはバツなのだ。Bunglesは友達が持っていたので、確か僕はこの時の選択で、「Heart」を選択した。それはそれで後悔はしていないのだが、今、聞き返すことはないアルバムのひとつだ。

 そんな状況の中で、僕に最高のチャンスが訪れた。「修学旅行」である。この行事は、親の財布が緩む。
「おみやげ代とか、いろいろお金かかるだろうから、餞別をあげよう」
貰ったお小遣いは、確か三万円。CDが10枚買える。みんなが新京極で八つ橋だのおみやげを買っている横でレコード屋に行き、CDを買い漁った。その中の1枚が、このカナダのトリオバンド「RUSH」の「Hold Your Fire」である。

 さて、なんでこのマイナーなバンド「RUSH」を買うに至ったか。シングルカット1曲目の「Time Stand Still」のコーラスに、エイミー・マンが参加しているからである。
 RUSHのことは、中学時代に「Power Windows」がリリースされていたのは知っていたし、「Big Money」っていうなにやら、シンセがぱきぱき鳴っているような曲だなぁ、っていう程度で知っていた。心の琴線に触れるような楽曲ではなかった。

 さて、修学旅行の帰りのバスの中だが、ポータブルCDなんてものは持っていないので、ひたすらライナーノーツと歌詞を読みまくった。友人が大富豪やってる横で、ひたすら歌詞を読んでいた。だって、曲が聞けないんだもの。

 原文と訳詞を見比べながら読み進めると、僕の目からは、みるみる鱗が落ちまくった。 
「なんなんだ。この歌詞は。ロックの歌詞じゃねぇ」
 そう、僕は、気づいてしまった。このバンドは、安易なラブソングは謳わない。ストーリーテラーでもない。メッセージソングほど厚かましくない。これは、哲学だ。これは、道標だ。

「事態に直面したとき、どのように考え、行動すべきか」

たぶん、僕は悲観論者であった。しかし、あっけらかんと楽観的に振る舞う術を人間関係の中に構築していた。

日本で「エゴ」というと、「わがままを押し通す」的な、どうもネガティブな印象しかあたえないと思う。「エゴ=自我」という本来の意味でいくと、自分が自分であるべき主義主張をしっかりと持って生きていく、そういうこ
とがとても重要なのではないかと思う。生きている意味であったり、存在意義、行動に至るモチベーションというものが、自分の心の中の根底にしっかりと存在していれば、人生ってのは、なんて素敵なものなのだろう、と思えてくるはずだ。

 初めて買ったRUSHのCD。僕は歌詞を先に読んだ。もしこれが楽曲を聴くことから始めたら、きっと気づかなかっただろう。
 この経験から、僕はまず歌詞を読む。それから曲を聴き始める。RUSHに限らず、そうすることにしている。

「RUSHは歌詞がいい」

さて、次の新譜は、いったいどんな世界を見せてくれるのだろうか、とても楽しみだ。

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